2/03/2009

Koa Canoes



Koa Canoes

皆さんお久しぶりです、最近ブログに書き込みが出来なくてすみません。大学4年生は僕が想像していたものより遥かに忙しく手が回ってない状態です。でもその中でも卒論はアウトリガーの事を書いているので楽しい忙しさでもあります。
このエントリーはその卒論の一部を(セイヤに助けてもらいながら笑)訳した様な物です。

今日はハワイのコアカヌーの事を少しお話したいと思います。

最初は今のアウトリガーの始まり…

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アウトリガーカヌーの進化

アウトリガーカヌーが今の様な洋風なレーシングスポーツに変わり始めたのは百年あたり前だ。その前のカヌーは主に移動、釣り、サーフィン、ギャンブルに使われていた。ちなみにこのギャンブルは、自分が一番強くて速いと思うパドラーの6人を他のクルーと対戦させて どっちが速いかを選びレースをさせるものです。今のハワイではアメリカの法律の為ギャンブルは違法なのでもうこれは出来ません。米国や英国がハワイに上陸してからアウトリガーカヌーは洋風のレーシングスポーツの様に行われ始めた。カヌーが特別にレースの為にデザインされたのが1907年のクヒオ王子のコアカヌーが初めて。

重量は約280kgで長さは12.2m当たり。今のパドラーが見れば明らかに重すぎると言うでしょう。それでも彼のデザインは当時の最新最速のデザインだった。クヒオ王子は1907年から1910年まで毎年、このカヌーで数々の大会で優勝しました。そこからアウトリガーカヌーのデザインは進化し始め1960年にはMALIAデザインのファイバーグラスカヌーがモロカイで3回フリしたにも関わらず優勝してしまいファイバーグラスカヌー時代が始まった。

現代のレースの結果を見るとファイバーグラスがほとんどトップを占めていてコアは別のデビジョンで参加しつづけている。もちろんチームハワイがコアカヌーに乗っていたら僕達はどんなに立派なファイバーグラスに乗っていても勝てません笑。なのでコアカヌーとファイバーグラスの差はそこまでではない事を理解して頂きたいです。 それでも今ではアウトリガーカヌーのデザインによってレースの勝ち負けが決まる程デザインの重要性が高まっている。


ならデザインの重要性が求められる今のアウトリガーレーシングスポーツ界でコアカヌーの役割はいったいなんだろう?


それを答える前にコアカヌーの基本的な事とコアカヌーの伝統一つ、木の選び方、の事を話したいと思います。


コアカヌーの基本的な事


コアの木はハワイ現地の植物であり今では数も少なく値段も非常に高い。コアカヌーは一本の木から掘り出される為12.2mのカヌーを掘り出せるほどの巨大な木が必要です。そこにさらに加わってカヌーが掘り出せるよう直線であることが求められる。今ではコアカヌーを 作りたくても木が見つからなくて 作業が始まらない事が多いです。ホクレアも現地でコアの木が手に入らず海外から木を頂いたらしいです。このようにコアカヌーを作るにはまず貴重なコアの木を見つけ、次にそれが巨大であり、さらにスペックに合っているか否か確かめ、コアカヌーを作れるプロの職人を見つけなければならないので大変な作業です。ハワイではこのカヌー職人をMaster Carver または Kalai wa’aと呼びます。古代のハワイでは Kalai wa’a は村にとって重要な存在であった。彼らの頭の中に描かれたカヌーの設計図と技術により村は大漁に恵まれ戦争の時もカヌーで移動出来る様になった。その為Kamehameha王は戦争のカヌーを作る為に100人以上もこの Kalai wa’a を用意していたとも言われている。コアカヌーの彫り出しが始まる前は下準備が行われ、木は半年以上倉庫(伝統的な保管室)に保管され乾燥されます。

一度彫り出され出来上がったコアカヌーは非常にデリケートな為あつかいにも気をつけないといけません。パドルはカーボンだとカヌーの横に傷が付くので原則禁止、コアカヌーを持ち上げる時はシートをもたないでシートの下にあるカヌー本体をつなげるモールドを掴むなどコアカヌー独自の扱い方が有ります。今、一つのコアカヌーを作ろうと思えば費用を合わせて(今は円高なので)約450万円から620万円はかかります。ファイバーグラスのOC6は約200万円なので皆さんがいつも乗っているカヌーの倍以上です。この値段の高さによりコアカヌーをもっていないクラブもハワイに存在します。島によって一つもコアカヌーがないケースも有ります。モロカイ島もつい最近までコアカヌーがなかったのです。ハワイではレガッタという短距離のシーズンが一番人気で、そのOHCRAハワイ州決勝戦は全てのクラブがコアカヌーでレースするのが決まり。こうなるとコアカヌーをもっていないクラブは他のクラブまたは個人的にコアカヌーを所有している人の協力によってコアカヌーを借り、レースに参加出来る様になります。僕達もコナレースでプライベートオーナーのコアカヌーで漕げて貴重な体験をさせていただきました。




コアカヌーの木の選び方

コアカヌーの木を選ぶ時は厳しい伝統に従います。今コアカヌーに使われるコアの木を選ぶ時は古代と同じ方法でKahunaが森に入り‘Elepaio (ハワイに生息する鳥の一種)がコアの木に止まって木から虫を食べているか食べてないかを見てそれによって木を選びます。‘Elepaio が止まって虫を食べれば木の中身は虫に食われている可能性が高い。でもこの‘Elepaio が虫を食べなければ木は健康でありカヌーを造るのに相応しい事が分かります。一つのハワイの神話ではLeaという女神の息子が亡くなった時、彼女は彼を地面に埋め、そこから‘Elepaio が生まれたという説があります。‘Elepaio はそこから未来の Kalai wa’a の木を選ぶ手伝いを行う様になった。デビッドマロ(18世紀に Ka'ahumanu女王の親戚でありKamehameha王とも強く関わっていた人物)に伝わってきた説によると古代のKapuna は木を選んだ後に一晩眠り、その夜見た夢によってその木をカヌーに使うか使わないかを決めていたらしいです。最近はコアの木も少なく夢によって選ぶ余裕がない為これはもう行われてないと思われます。

伝統的なコアカヌーの製造ではお祈りは必ずあります。このお祈りは全部語り継ぎによって今の時代までたどり付いたので場所や Kahunaによって違ったりします。ただ共通点としては、ハワイアンは 人間より前に現れた動物や植物を全てKupuna(先祖)だと信じていた為、コアの木の命を奪う前にお祈りをするのは当たり前でした。 木を選ぶ時ケンカや悪口を言うのも禁じられていた。そこからさらに造る時や海に出す前(進水式)のお祈りも数多くあります。自然には神が存在していてコアカヌーを作った時はそのカヌーを生き物として扱います。


Henriques Peabody のカヌーのパーツの説明では「今の君は木だ、でも私が君を切れば、君は人間になる」と書かれている。 彼によるとカヌーの全ては人間の体の部分に例えられる 。腕はヤク、頭はシールド、耳はシートを本体に繋げるブラケット、肋はアウトリガー、足はアウトリガーがヤクに繋がっている部分、目はカヌー本体の一番前と後ろ、胴体はカヌー本体、顎はカヌーを横から見た時の本体一番上のはじ(カヌーの中と外を分ける線)、カヌーにセールが付いていればそれは羽または凧だと思われていた。ここまで一つ一つのカヌーのパーツを体の一部に例えられると乗るのが申し訳なく感じてきますね。笑



コアカヌーの役割

コアカヌーはファイバーグラスにはなかなか勝てない。でもハワイアンの文化を守る為に大事な役割を果たしています。古代のハワイは前のポストで説明した様に、英国がハワイを発見する以前ハワイアンは文字が無かったので全ての歴史や文化は語り継ぎで受け継がれていました。 英国や米国の植民地政策によりハワイも変わっていきHulaも禁止になる場面もありました。このハワイの変化によりハワイアン独自の文化は消えつつあった。その中でアウトリガーカヌーはスポーツとして人気が出始め、進化していくのを感じた米国のビジネスマンがハワイ初のアウトリガーカヌークラブ(Outrigger Canoe Club)をハワイアンの文化を守る理由で1908年に立ち上げられたと言われてます。

ただ、伝統を守る為にクラブを設立してもカヌーの役割が変われば伝統も消える可能性があった。アウトリガーがコアからファイバーグラスに進化してしまうと木でカヌーを造る時の儀式や伝統は消えてしまう。自然からカヌーを生み出す伝統は洋風のレーシングスポーツへの変容によって消える恐れもあっただろう。アウトリガーのブログなので適切ではないかもしれませんが、皆さんはサーフィンの伝統は何なのか考えた事はありますか?サーフボードも昔は自然から生み出されたもの。それが進化していき今では全部ファイバーグラスやカーボン。もしかしたら古代サーフィンの伝統や文化も存在していたかもしれません。それがどこかの記録に残っているのかどうかは僕には分かりません。ただ確信もって言えるのはほとんどのサーファーはサーフィンに繋がっている古代の伝統や文化が存在していたら、その事を知らないままサーフィンをしている事です。もちろんそれを知らなくてもサーフィンは十分楽しめます(僕も知らないままサーフィンしてます)。ただサーフィンが民族の文化や伝統がスポーツに代わり消えてしまう一つの例であったら凄く悲しい事だと思います。コアカヌーはこのように進化していくハワイのアウトリガーカヌーと繋がっている伝統や文化を守る役割があるのです。コアカヌーを造り続けレースに参加させる事によって進化していくアウトリガーカヌー界でも古代のハワイアンの文化は存在し続けられ様になるのです。


僕が思うにはアウトリガーカヌーが次に立ち向かう挑戦はグローバル化。どれだけハワイアンの伝統や文化を世界に広がっていくこのスポーツが守り続けていけるのか?やはりその答えは、最初にアウトリガーが入ってきた時に、どのようにアウトリガーを広げていくかによって決まると思います。日本のアウトリガーカヌー界ではまだコアカヌーがない。その為コアやアウトリガーにまつわる伝統や文化をまだ身近で学べない状況です。コアカヌーはハワイの文化や伝統を運ぶ船でもある為日本にも必要だと思います。

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少々雑でしたがこれで少しはコアカヌーの知識と役割を知っていただけたと思います。

今まで進化してきたアウトリガーカヌーというスポーツはハワイの文化や伝統が深く関わってきました。日本の大会に参加した時僕はアロハを感じました。多分皆さんも初めてアウトリガーの大会に参加した時は何かしら不思議な雰囲気を感じたと思います。それは日本でアウトリガーカヌーはまだ完全にスポーツ化されてないからだと僕は思っています。ハワイの文化を伝えて守り続けるスポーツでもあるアウトリガーカヌー。他のスポーツでは味わえないスピリチュアルな面と誇りがあると感じます。日本もこれからアウトリガーカヌーがどんどん人気になっていく中で僕も皆さんも初めてのアウトリガーの大会で感じられた不思議な雰囲気(アロハ)をハワイアンから受け継がれた伝統の様に守っていきたいですね。


そうすればいつかOC6のコアカヌーも日本に上陸するかもしれません。。。。


でもその前に1pieceのOC6が欲しいですけどね!笑


皆さんまた長い文章を読んでいただきありがとうございました。



A Hui Ho!

Alex

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

はじめまして、キタと申します。
コアカヌーのお話興味深く読ませていただきました。 私はコアではありませんが、プライスウッドでOC2を作り、湘南で時々浮かんでいます。重いし、木なので取り扱いも気を
使いますが、乗れば乗るほど愛着が沸いてきます。カヌーって生き物なんですね。。。

匿名 さんのコメント...

面白くて一気に読んでしまいました。カヌーのもつスピリット、受け継がれてきたものを深く感じました。その魅力にのめりこみそうです。今度カヌーに乗る時、話かけてしまいそうです。(笑

匿名 さんのコメント...

Alex ブラボー!読み応えあるね。素晴らしいよ。
こういう歴史や文化やスピリット・・・日本でアウトリガーカヌーをやる人にも必ず知ってもらって、パドルしてもらいたいよね。日本では一時的な流行やビジネスで終わらない様に大切にしていきたいですね。
Lifetime relationship・・・僕にとってのアウトリガーカヌーは、そんな感じかな~。

ところで、キタさん!凄いですね。
是非その手造りOC-2観たいです。乗りたいのです。
連絡いただけますか? Dukeまで・・
よろしくお願いします。